東山魁夷、冬景色に見えない「冬の花」のなぞ
巨匠・東山魁夷
「冬の花」
京都の北山杉を描いた作品です。
川端康成が文化勲章を受賞した翌年(1962年)にお祝いとして魁夷が贈ったものです。
その時、川端は睡眠薬中毒の治療のために入院していました。
この絵を気に入った川端康成は絵を病室に飾り、
「毎日、絵をながめてゐると、近づく春の光が明るくなるとともに、
この絵の杉のみどりも明るくなつて来た」と話したと言います。
川端康成はこのように作品を喜んでいます。
後に代表作「古都」の口絵にも使用しています。
「古都」は朝日新聞で連載されていた小説で、最終回は1962年1月23日。
魁夷は連載終了の翌月に川端を見舞い、絵を贈っています。
小説「古都」の最終章のタイトルは「冬の花」でした。
「古都」は、美しい双子の姉妹が出会い、そして別れる物語です。
子供の頃に別れて、片方は良家のお嬢様。もう片方は村娘として育てられています。
その村が京都の北山杉の美林の里でした。
東山魁夷の描いた「冬の花」ですが、
この絵からは冬の装いがまったく感じれません。むしろ、青々とした樹々の成長する姿のようです。
冬と言っても、春に近い季節。これから芽吹く杉を描いたのでしょう。
なにより、病人に贈る絵だったのですから。
それから10年後の1972年、川端康成は72歳でガス自殺したのでした。
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