牧之瀬雅明・禅語と季節のブログ

季節の花々と人生を重ねて

立夏を迎え、「青山緑水」を願う日々


立夏、いよいよ夏季到来です。 
暦の上で夏の始まりを迎えました。この日から立秋(2021年は8月7日)の前日までが夏季になります。
ついこの間、4月に入り、新たな年度を感じたと思ったら、もう夏が来たのですね。4月は「雨降って百穀を潤す」ことから、二十四節気の暦で「穀雨」とも呼ばれる季節です。
春の雨ですが、今年は少なかったように感じます。春の雨は作物を育てるのに欠かせない天の恵みです。このことから春雨について多くの詞が残されているほど。例えば、穀物を育む瑞雨、大地を潤す甘雨、花の開花を急き立てる催花雨、菜の花が咲く頃は菜種梅雨など様々な枕詞を持ちます。どの名も豊作をもたらす恵みの雨に感謝する願いが込められました。


さて、5月を迎え、草木が花を競い合った爛漫の春が過ぎ、新緑の映える初夏の薫風瑞雲が漂います。生命が躍動するこの時季は溢れんばかりの自然の生命力を身体の奥深くに取り込みたくなり、自然の多い場所に飛び込んでしまいたくなります。


 中国唐代の名僧、龍牙居遁禅師はこの季節に相応しい「青山緑水」という禅語を残しました。青々とした山々、緑が映る水の流れという森羅万象を育む雄大な情景が表現され、あるがままを慈しみながら生命の煌めきを讃えています。この禅語には「是我家」の語句が続き「青山緑水の大自然こそ私の住まいだ」と高らかに宣言して、自然の恩恵を得て今日も生かされていることに感謝した一節と解されています。


仏教では人と自然とが切り離せない関係にあることを「身土不二」と申します。「身体と土は二つにあらず」との意味で、人と人が暮らす土地は一体であるとの教えです。中国で古くから伝わる「医食同源」という考え方も同じで、自然界と人間、そして生活する土地との深い関係を洞察しています。


なにかとコロナ禍で、緊急事態だと喧伝され、人の営みが果たせませんが、あと、少しだけ我慢をすれば、元の生活に近づくことが叶うのでしょうか?


青々とした山をいただき、緑を映す川の流れを想像しながら、しばし大都会のビル群で息を潜めて暮らすしかなさそうです。


皆さまに不安のない日が訪れますように・・・